石本 正の作品

「牡丹」
1989(平成元)年
京田辺市天王にある牡丹園「無二荘」でスケッチをしている時、白と赤の牡丹が並んで咲いている様子を見て、オーストリアのアルトゥル・シュニッツラー(1862-1931)原作の『輪舞』という映画の一場面が浮かんだという。白や赤の牡丹は、輪になったりS字型になったりして踊っている娘たち。左上のつぼみは、輪の外からその様子を見ている青年たちの頭の飾りというイメージで描いている。
彼は花をスケッチするとき、全ての花や葉を見えたそのまま描くことはしなかった。見えたもの全てを描いてしまうと、自分が美しいと感じた流れが死んでしまう事があるからだ。この作品も、視覚にとらわれず、心に感じた美しい形のリズムを大切にして描かれている。