石本 正の作品

「五条坂風景」
1950(昭和25)年
たそがれの光に浮かび出た京都の古い家並みが、線と面だけで構成されている。画家は、古来の日本絵画の素晴らしさは、線と面だけで構成される平面的な画面によって、視覚の向う側に隠されている形態や色彩を掴もうとするところであり、そこに写実表現では成し得ないリアリティーが生まれることであると言う。
発表した当初は、常に新しい表現をという時代背景もあって“古くさい絵”などと評価されたりもしたが、彼にとって本当に描きたいものを表現した、若き時代の大切な作品だった。そのため生涯手放すことはなかった。