石本 正の作品

「午睡」
1977(昭和52)年
1977(昭和52)年頃から、裸婦がまとう衣装に、肌が透けて見える“うすもの”が登場するようになる。かねてより画家が好きなボッティチェルリの『春』に描かれた女神たちが、このような“うすもの”を身につけている。この衣を通して見える肌の美しさを日本画の絵具を使って表現したいと思い、そのイメージに近い衣装をモデルに着せて描くようになった。
また、この頃の裸婦のもう一つの特徴は、舞妓姿でもないのに女性の首から上に白粉が施されていることだ。これまでに発表された舞妓裸婦の名残ともいえるだろうか。白粉で美しく化粧した顔と、血の通った肌を思わせる肉体との対比が醸し出す非現実感は、描かれた女性たちの色香を一層強く漂わせる。これら「白粉の裸婦」は、1980年代中ごろから次第に見られなくなっていった。