石本 正の作品

裸婦立像
1979(昭和54)年
終戦直後のある日、石本は電車の中で、目の前に座った若い母親が子どもに乳をふくませている様子を目にした。このとき、豊かな乳房の間に蒼白い一本の線を感じて息をのんだという。理屈から考えれば、影になるはずのこの箇所が、蒼白く光を放っているように見えたのだった。この発見の衝撃は彼の身体の中を貫き、その後、女体だけが発する神秘的な燐光として、裸婦の胸の間を白く描くようになった。
本作は、その表現と、仏像から美しさのヒントを得たという伏し目がちな表情もあいまって、非常に神秘的かつ美しい女性像となっている。