石本 正の作品

「紅土の丘」
1958(昭和33)年
茶褐色の荒涼とした大地に佇む一羽のフクロウ。宙を凝視する姿がとても印象的な作品だ。独特の波のようなマチエル(絵肌)は、土や地層など不変のものを表し、移ろいゆく命をフクロウの姿で表現しているのだという。
目の周りにきれいな群青の隈取りが入れてあり、この色がフクロウの眼をより印象深く見せている。強調された視線が、厳しい荒野に生きるフクロウと、作者である石本自身あるいは見る者の心情と重なるようにも感じられる。