石本 正の作品

「旅へのいざない」
1951(昭和26)年
《第15回新制作協会展》に出品し、最初の新作家賞を受賞した作品。本作は、美術評論家の河北倫明氏(1914-1995)に高く評価され、当時の秀作展にも推薦を受けて出品された。
題名にもなっている『旅へのいざない』は、シャルル・ボードレール(1821-1867)の詩集『悪の華』に収められている詩のひとつ。石本は、この詩にフランスの作曲家アンリ・デュパルク(1848-1933)が作曲し、シャルル・パンゼラ(1896-1976)が歌った歌曲『旅へのいざない』を聴きながら創作した。詩中の“曇りがちなあの空の 濡れそぼった太陽”を表現するために、太陽の部分だけ油絵具が使われており、詩と音楽によって心の中に浮かぶ情景や感動を、いかに実感を持って表現するかという創意工夫がされている。
右から2番目と3番目の女性の顔は後年加筆されたため、発表当初とは変わっている。