石本 正の作品

「軍鶏」
1941(昭和16)年
京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)2回生への進級制作の際、大阪府豊中市の西福寺にある若冲の絵を見て刺激を受け、京都の上賀茂の軍鶏を飼っている農家に何度か通って鶏を観察し、自己流でこの作品を描いたという。当時の教授・三宅鳳白氏に「なかなかいい絵を描きましたね」と評価された。
絶妙なバランスで配置された3羽の軍鶏は、どれも軽く翼を上げ威嚇しているようである。余白を広く取った構図が、3羽の緊張感をいっそう強く演出している。一枚一枚丁寧に描かれた羽毛や、絵具を盛り上げて質感まで表現されたがっしりと太い足の表現に、若き画家の鋭い観察眼が感じられる。